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 病院のベッドの上で希は青紫色の頬をしたまま、ぼんやりと外を眺めるように上半身を起こしていた。  泉はずっとその横で静かに泣いていたが、希にはその姿が見えていないかのように無反応だった。 「希ちゃん……、ごめんね……」  その言葉にピクリと希は反応し、無表情のまま視線を泉に移し、ようやく言葉を発した。 「なんで、謝るの……?」 「だって……、僕、ずっと、知って、て……」 「光流は……怖くて話せなかったんだろ?」 「っ……うん」 「俺も……話したら殺すとか……、光流にも同じ目に遭わすとか言われた……」  希はまた視線を泉から外すと、覇気の無い弱々しい口調で静かに続ける。 「光流…….本当に、悪いと思ってんなら……」  希の眼は急に鋭く光を持つように強くなり、大きく見開き、泉をもう一度見据えた。 「──償えよ」  泉の涙は一粒落ちると静かに止まり、  何かを決意したかのように泉は希を見つめ、「わかった」とだけ短く答えた。  子供の罪悪感は方向性を間違って、折れ曲がって、八つ当たって──歪んで──壊れて──。  希の怒りと悲しみは暴力となって泉に投げつけられ、一年もする頃には性的欲求となって現れだした。     
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