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──暗くて、無愛想。
茅葺(かやぶき)にとってそれが彼の第一印象だった──。
茅葺は書店のバックヤード内を店長に案内され、最後にひとりの男性店員を紹介された。
「泉(いずみ)くん、こちら新しくバイトで入った茅葺くん。茅葺くん、彼が教育係に入る泉くんね」
「茅葺です。よろしくお願いします」
「泉です。よろしく……」
なんとも覇気と愛想の無い返事だなと、茅葺にとって、泉の第一印象はあまり良いものではなかった。
泉という男は黒くて太いフレームの眼鏡を掛け、髪は肩につく程長く、邪魔な髪をハーフアップ程度に結んでいるものの、前髪はほぼ眼にかかっており、販売員とは思えない出で立ちだった。だらしないのかと思いきや、制服の白いポロシャツはきっちり第一ボタンまで閉められていた。
店内を案内される間もチラチラと茅葺は泉を見ていた。横に並んだ時にふと、眼鏡に当たる程の長い睫毛を見つけた。右眼の下には涙ボクロが二つ星のように並んでいて、近くで見ると、どこか怪しい色気のある男だった。
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