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 それに対して泉に怖さはなかった。いつかこうなると、どこかでわかっていたからだ……。    男の自分の身体の中に、男の希がいることが泉にはただ不思議な感覚だった──。  それは歳を重ねるごとに悪化し、高校生になると、眼の周りの腫れを誤魔化すための伊達眼鏡が泉に癖ついた。  高校入学当初から、あちらこちらに傷を作り、痣なのかキスマークなのかわからないようなものを付けてくる泉は、同い年の他の子供たちからは完全に浮いた存在で、そのせいか、友達らしい友達のひとりも出来なかった。  何度も何度も、泉は女のように希に抱かれ、自分のセクシャリティについてあまり考えなくなっていった。  自分の身体の上で行為に耽る希は普段よりずっと無防備で、泉が知る中で一番生身の人間らしく思えた。  少し震えて声を出し、自分の中で達するその姿に泉はいつの間にか快感を覚えた。  それは最早母性だ──、  自分の雄の性的本能なんてものはとっくにどこかへ無くなってしまったんだと泉は悟った。  今や希を愉しませるためにあるような泉の秘められた場所は、希に与えられる刺激を常に素直に受け入れ、それが熱くなった希自身であろうとも、無機質な器具だとしても希の求める通りに泉は喘いでみせた。     
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