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 その日は約束の時間になっても、隣に住む同じ9歳の幼馴染みの希は家に来なかった。  痺れを切らした泉は母親に希を誘いに行くと伝え家を出た。家の呼び鈴を鳴らしても誰からの反応もなかった。寝ているのかもしれないと泉は慣れ親しんだ希の家の庭に周り、リビングのある窓へ向かった。  いつもは開いているカーテンが閉まっていて、留守なのかもしれないと泉はカーテンの隙間から中を覗いた。 ──だが、そこに希は、いた。  泉はあまりにも恐ろしい光景に驚いて声を出しかけたが、必死に口を抑えて息を止めた。  希は全裸でこちら側を頭にして仰向けになり、恐怖と絶望が混ざったような顔で泣いていた。その小さな身体の上には希の父親が馬乗りになり、薄気味悪い笑みを浮かべながら希の身体のあちらこちらを舐め回していた。  希は泉に気付き二人は目が合った。  泉の心臓は破裂してしまうのではないかと思うくらい胸の中で激しく震え、暴れ回る。すぐに父親にも気付かれ窓が開く。泉は見たこともない鬼のような形相の男に捕まり、あまりの恐怖に声も出なかった。  リビングに引き摺り込まれ、手首を掴まれたまま低い声で希の父親は口の端を上げながら告げた。     
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