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 大量の新刊を並べる泉が立ち上がるたび、顔を歪めるのが先程から気になり、茅葺はいい加減声にしてしまう。 「あの……大丈夫ですか?」 「え?」 「なんか、顔色良くないスよ。運ぶのとかだったら自分全然やるんで、言ってください」  泉は少し驚いたように動きを止め、何泊か黙ると薄っすら笑みを作った。 「ありがとう……」  茅葺は思わず小さくだが、表情を変え笑う泉に驚き、なぜかしばらくその姿から視線を外せずにいた。  十分煮詰まったビーフシチューの火を止め、よそった器とサラダをトレイに乗せ運んで来た泉は、本を読んでいる希に声を掛ける。 「お待たせ」  希は読んでいた本にスピンを挟むとテーブルに置いた。それを見た泉はある事に気付く。 「あれ? それ、うちの店のカバー……?」 「ああ、今日買った」  胸の前で行儀良く両手を合わせると、希は泉を見ることなくさっさと食べ始めた。 「来てたんだ、知らなかった──」 「俺は知ってたよ。新人くんに色目使ってるお前のこと」 「え……?」  困惑した表情の泉は言葉を失い、目の前で薄ら笑いを浮かべる希の顔を見つめた。
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