記憶

13/47
1728人が本棚に入れています
本棚に追加
/315ページ
「僕は、狐じゃ、ないです」 「知っておる。儂の息子の子になったのが雪翔、お前じゃ」 「だから私達はお爺さんとお婆さんなの。仲良くしましょうね?」 「はい……」 「当主、先程は知らぬふりをして申し訳ありませんでした。天狐の従兄弟と知られるわけにもいかなかったもので。この紙を……食べて良いものとダメなものが書いてあります。御用の際には守として煌輝、治癒として凛が置いてありますので使いに使ってください」 「わかった。お主はどうするのじゃ?」 「お話した通り、人間の手続きなどと交渉を中心に動きます」 そのまま窓から消え、残ったのはお爺さんとお婆さん。 「あら?果物が食べられるのね?幾つか買ってこようかしら?りんごと、苺、どちらが好き?」 「え?いち、ご?」 「私ちょっと行ってきますから、お爺さん頼みましたよ?」 「任せておけ」 「あの、遠い、ところか、らきて、くれたんで、すか?」 「無理して話さんでもいいぞ?遠いといえば遠いが、近いといえば近いのぅ。狐の住む街から来たんじゃが、元気になったら遊びに来たらいい」 「はい」
/315ページ

最初のコメントを投稿しよう!