ギャンブル町

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「お前は最近不正を疑われてるけど大丈夫か?」友人はエス氏を心配していた。 「俺が大穴ばかり当てるから嫉妬してる連中がいるんだろ。そりゃ殺人事件とかを当てたら関与を疑われても仕方ないけど、自殺や病死なんてちょっと調べたらなんとなく分かるもんだろ」 「いや、普通は分からないよ。特に自殺なんて」友人は首を横に振った。  数年前にTという名の町民がいた。  元々は違う町に住んでいたが、この町の存在を知ると、当時勤めていた会社を辞めてわざわざ引っ越してきた奇特な人だった。  しかし賭け事が好きというくらいでは町民には歯が立たなかった。出産日まで賭けの対象になってる町で生まれた人々は、生粋のギャンブラーだ。  T氏は負け続け、借金で首が回らなくなり、最後の手段に打って出た。それは自分の死ぬ日に自分で賭けるというもの。つまりは自殺だった。残された家族にお金を残して死ぬ予定だったのだ。T氏は自分がノーマークであると思い高いオッズになると思っていた。  しかしエス氏はそれすらも読み、T氏が予定していた家族に渡る金の半分を手に入れたのだった。
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