第1章 記憶の固執

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2 暮山啓介は、良美のお腹の膨らみを見て、思わず顔が緩んだ。 「どうしたの、そんな顔をして?」 寝室の畳に座り込んで、洗濯物をたたむ良美は、啓介に笑いかけた。 「いや別に」 啓介は良美の隣に座ると、洗濯物を一緒にたたみ始めた。 「ありがとう」と良美は微笑んだ。 啓介は何も答えず、鼻歌交じりに手を動かした。 安くて狭いマンションでも、良美と居れば気にならなかった。 「その曲、好き。この子も、好きみたいだし」 良美はお腹を押さえながら言った。 「この曲は俺が作ったんだよ」 「大学のバンドで?」 「うん」 啓介はスマートフォンを取り出し、音楽を流した。 「何の曲?」 「ほら、大学の時に俺がいたバンドの。新曲だってさ」 「お友達、まだやってたんだ」 良美は目を丸くした。 「最近、デビューが決まったんだって」 「凄いじゃない!」 「でも、みんなもう30歳だからなぁ」 「30歳だとダメなの?」 「ダメじゃないけどさぁ……」
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