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暮山啓介は、良美のお腹の膨らみを見て、思わず顔が緩んだ。
「どうしたの、そんな顔をして?」
寝室の畳に座り込んで、洗濯物をたたむ良美は、啓介に笑いかけた。
「いや別に」
啓介は良美の隣に座ると、洗濯物を一緒にたたみ始めた。
「ありがとう」と良美は微笑んだ。
啓介は何も答えず、鼻歌交じりに手を動かした。
安くて狭いマンションでも、良美と居れば気にならなかった。
「その曲、好き。この子も、好きみたいだし」
良美はお腹を押さえながら言った。
「この曲は俺が作ったんだよ」
「大学のバンドで?」
「うん」
啓介はスマートフォンを取り出し、音楽を流した。
「何の曲?」
「ほら、大学の時に俺がいたバンドの。新曲だってさ」
「お友達、まだやってたんだ」
良美は目を丸くした。
「最近、デビューが決まったんだって」
「凄いじゃない!」
「でも、みんなもう30歳だからなぁ」
「30歳だとダメなの?」
「ダメじゃないけどさぁ……」
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