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メジャーデビューに漕ぎつけるのは十分に大変なことだが、
この先バンドが生き残っていくことはもっと大変なことだ。
30代で失敗した後の、キャリアを考えると、
啓介はバンドを早めに辞めて良かったと、心の底から思っていた。
「明日の夜、祝賀会があるみたいでさ。顔くらい出そうかなって」
「うん。行っておいでよ」
「ありがとう」
「啓介は、自分も続けていたらって、思わないの?」
「まさか。辞めて正解だったよ」
啓介は良美のお腹に手を当て、両親のことを思い返していた。
音楽にのめり込み大学を3回も留年した自分。
そんなバカ息子のために、大学卒業という選択肢を最後まで残そうと、
貧乏に苦しみながら、学費を払い続けてくれた両親。
音楽に対する熱も冷め、真っ当な道に戻った時、
どれほど親に感謝したことか。
そんな自分も、もう少しで親になるのだ。
「親父とお袋の墓参りにでも行って来ようかな」
「どうしたの? 突然」
「迷惑ばかりかけたと思ってさ。子供ができたことも、報告してなかったから」
「私も行こうかな」
「いいよ。お腹も大変だし、俺一人で行ってくるから」
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