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「ごめんなさい」
俺は床に頭をめり込ませるように土下座していた。
「人としての知性が欠片でも残っているなら、2度と同じ過ちは犯さないように。いいですね?」
女神のように微笑んでいる鈴。
その心中が表情と一致していないことは、どんな鈍感にも理解出来る。
それ故俺は「もう絶対にしません」と答えるしかない。
「もういいです。それより、何かあの幽霊について分かりましたか?」
ああ、それなんだけど、と口を開こうとした時だった。
「名前は月城操。享年10歳。両親が他界した後、親戚に引き取られましたが、学校には通わせてもらえず、虐待を受ける日々。近所の住人が気付いた時には手遅れでした」
「・・・・・・」
いつの間に部屋にいたのか。
「以上、清水君がこの数日、誰彼構わず尋ね回っていた幼女に関する情報です~。お役に立ちました~?」
見る人をほんわかさせそうな、柔らかな微笑みを浮かべて少女は俺に確認をとる。
「あ、ああ。ありがとう、桃井」
「いえいえ~、どういたしまして」
「司! 誰ですか、この女は!」
突然会話に乱入してきた少女に驚き、身を固くしていた鈴が詰め寄ってきた。
「え? えーと、同級生の女子?」
「何で疑問符を浮かべているんです?」
鋭い目つきの鈴。
一切の誤魔化しが通用しない雰囲気だ。
「や、だって桃井は」
俺が説明するより先に、当人が口を開く。
「自己紹介が遅れてすみません~。私、清水君のストーカーの桃井幸と申します~」
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