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「は?」
ぽかんと口を開ける鈴。
無理もないなと思う。
普通はこんなに堂々と、ストーカーを自称しない。
「本当に?」
「正真正銘の事実ですわ~」
疑わしそうに何度も俺と桃井を見比べる鈴。
育ちの良さを匂わすおっとりした雰囲気と、たわわに実った胸元。
そんな大人の色気を感じさせる桃井が、どこにでもいそうな俺のストーカーなんて、まず信じてもらえない。
「そのストーカーさんが、何のようです?」
鈴の言葉にはいつもと違う棘がある気がした。
表情もどこか固い。
「実は、清水君が忙しそうにしているから、どうしたのか調べていたのです」
「それで?」
「そうしたら、ロリコンの彼が好む少女といちゃついていると分かりましたので、邪魔をしに」
にこやかなまま、桃井はまた爆弾を投じる。
「い、いちゃついてなんていません! あなた、目がおかしいんじゃないんですか!?」
ロリコン、って所に反応しなかったことに安堵する一方で、非常に焦った様子を見せる鈴に驚く。
(何でそんなに取り乱しているんだ?)
そんな姿を前にしても、桃井はあくまでマイペースに話す。
「失礼ですね~。これでも私、情報通として有名なんですよ~」形の良い眉を寄せ、わざとらしく口を尖らせる桃井。
これも見た目からは想像出来ないが、純然たる事実だった。
知りたいことがあるなら桃井に訊け、というのが俺の通う高校では常識になっている。
その知識の利用者には、高校のほぼ全ての生徒どころか、教師まで含まれているとか。
(自分のストーカーに訊きたくないから、俺は利用したことないけどな)
それでも、一向に進展しない調査に痺れを切らし、明日訊いてみるかと思っていたら、この結果に。
「とりあえず、情報は信用出来るから、まだ知りたいことがあれば桃井に訊くと良いぞ」
いいよな? と、桃井に視線で確認する。
「ええ、それが清水君のお願いなら」
「むー、分かりました」
不満げに唸りながらも、鈴は素直に頷いた。
背に腹は代えられない、って所だろう。
あの幼女の幽霊を成仏させてあげたい気持ちは、俺よりも強いはずだからな。
「それではですね」
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