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「次は、これなんてどうでしょう~?」
部屋の隅に置かれた鞄から桃井が取り出したのは
「黒ひげ危機一髪か」
ババ抜きと同じ、説明いらずの玩具だ。
「どうかな、操ちゃん」
こくこく。
早くやりたいと言わんばかりに首を縦に振られた。
それなら、と桃井から黒ひげを受け取ろうとして
(うぉっ!?)
危うく悲鳴を漏らしかけた。
『私も参加したいです』
そう言いたげな鈴の顔が、桃井の身体からぬっ、と飛び出してきていた。
(退屈なんだろうな)
仕方ない。
「なあ、2人に提案なんだけど、黒ひげに鈴も参加させちゃ駄目かな?」
『っ!』
俺の突然の提案に、鈴は驚き、他の2人は不思議そうに顔を見合わせる。
「どうやって参加してもらうんです~」
そんなの簡単。
「俺が鈴の分を刺す」
「ということは、清水君だけ一周毎に2回刺すんですか~?」
「いや、俺はやらないよ」
今の鈴が見えない2人からしたら、俺が自分で2ヶ所選んでいるようにしか見えないもんな。
「でしたら、私は構いませんよ~」
「操ちゃんは?」
「・・・・・・操も、別に」
「じゃ、そういうことで」
『わ、私はやるなんて一言も』
「ならやめとくか?」
鈴にしか聞こえない大きさで問うと、彼女は口をもごもごさせるだけ。
肯定も否定もしない。
「それじゃ、操ちゃんから時計回りに始めようか」
それを肯定とみなして、俺はゲームを開始させた。
『あ、ちょっと!』
「は~い」
こくり。
桃井が元気よく答え、操ちゃんも真剣にどこを刺すか選び始める。
『もうっ』
俺の勝手な行いに頬を膨らませながら、鈴は少し嬉しそうだった。
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