プロローグ

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声の主は桃井幸。 様々な物事に詳しい、同級生の中でも蠱惑的な女生徒だ。 「ロリコンだとは存じ上げておりましたが、このような時まで、ご自分の欲望に素直でいらっしゃるとは」 仕方ない人ですねぇ、と首を振る桃井。 否定しようにも、事実だから言い訳できない。 その証拠に、桃井は上級生からも羨まれるスタイルを持っている彼女に、俺は劣情を抱いたことはない。 そんな時。 ふわっと、空気が動いた。 「ほえ?」 力無い声をあげた鈴のルビーの瞳が開く。 服を着崩したまま、上半身を起こすものの、意識がはっきりしないらしい。 しきりに目をパチパチさせる様は幼子のようで、とても愛らしい。 「おはよう。いきなりで悪いけど、これが何か分かる?」 ずっと少女の目の前に用意されていた、満遍なく白いクリームが塗られた洋菓子を示す。 「けーき?」 「少し違うわねぇ。これは確かにケーキだけど、ちょっと特別なのよ?」 「?」 困惑する少女。 つまり、と指を1本立てつつ、視線で合図を送ってきた桃井に小さく頷き、 「「操ちゃん、誕生日おめでとう!」」 ぴったり声を揃えての祝福に、少女は瞳を大きく見開いた。 その驚きは、俺達が名前を呼び間違えたからじゃない。 見た目は鈴のまま。 けれど、身体を動かす意識は別人と入れ替わっている。 幼女の幽霊、月城操ちゃんと。 どうして、平凡な俺がそんな不思議な体験をしているのか。 きっかけは、一週間前のことだった。
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