1人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
俺には幽霊が見える。
いつからかは記憶にない。
でも、気が付いた時は自分が特別な存在みたいで、ちょっと興奮したことは覚えている。
まぁ、そんな高揚は一時だけだったが。
理由はいくつかある。
馬鹿にされたり、からかわれたりしたこと。
信じてくれない人も沢山いた。
極めつけは、それをネタに俺をテレビ局に売り込もうとした親父。
今はもう故人である親父のその行いが原因で、一家で京都に引っ越すことになった。
建ち並ぶ古い店や家屋が情緒的なここで暮らしていく上で、俺は幽霊が見える体質を隠している。
見えても特に騒がなければ、苦労なく秘密に出来た。
(そう、ちょうど今みたいに)
ちらり。
目だけで確認する。
時刻は昼12時。
日曜日の今日は、それなりに人の往来がある。
その中にぽつんと。
人波に取り残されるように、幼女が1人立っていた。
ぼさぼさに乱れた髪。
まるっとした顔には、痣や汚れが目立つし、着ている服はボロボロだ。
涙こそ流していないが、非常に色濃い哀愁が漂っている。
にも拘わらず、通行人は誰一人として、その幼女を気遣わない。
声をかけなければ、見向きもしない。
その時点で疑う余地もないが、決め手は幼女の足元。
靴を履いてない。
最初のコメントを投稿しよう!