第1章

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俺には幽霊が見える。 いつからかは記憶にない。 でも、気が付いた時は自分が特別な存在みたいで、ちょっと興奮したことは覚えている。 まぁ、そんな高揚は一時だけだったが。 理由はいくつかある。 馬鹿にされたり、からかわれたりしたこと。 信じてくれない人も沢山いた。 極めつけは、それをネタに俺をテレビ局に売り込もうとした親父。 今はもう故人である親父のその行いが原因で、一家で京都に引っ越すことになった。 建ち並ぶ古い店や家屋が情緒的なここで暮らしていく上で、俺は幽霊が見える体質を隠している。 見えても特に騒がなければ、苦労なく秘密に出来た。 (そう、ちょうど今みたいに) ちらり。 目だけで確認する。 時刻は昼12時。 日曜日の今日は、それなりに人の往来がある。 その中にぽつんと。 人波に取り残されるように、幼女が1人立っていた。 ぼさぼさに乱れた髪。 まるっとした顔には、痣や汚れが目立つし、着ている服はボロボロだ。 涙こそ流していないが、非常に色濃い哀愁が漂っている。 にも拘わらず、通行人は誰一人として、その幼女を気遣わない。 声をかけなければ、見向きもしない。 その時点で疑う余地もないが、決め手は幼女の足元。 靴を履いてない。
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