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「和、新しくできたパフェ屋さんに行く?」
「あ? 徹と俺で? バカじゃあねぇの。キモすぎんだろ」
「でも和さ、帰る時にいつもボードに書かれているメニューをじっと見てるよな? 本当は甘党で、パフェ好きだろ?」
「なっ!」
頬を真っ赤に染め、いつもは睨むようにして細められているその目が大きく見開いた。一緒に開かれた口からは八重歯が覗き、戸惑った勢いからかシャッと俺の腕を引っかいた。どういう否定の仕方だよと笑えば、今度は鞄を俺の背中へと叩きつけてくる。
「すっごい痛いからパフェは和の奢りだな」
「俺は別に、パフェとか、好きじゃあ、ねぇし!」
「はいはい、またそんな嘘ついちゃって」
「嘘じゃあねぇ! そもそもお前もパフェ好きじゃなきゃあ、わざわざ俺となんか行かねぇだろ? お前のパフェ好きに俺を巻き込むな!」
とどめを刺すかのように俺を蹴り上げようとした和の足から逃げ、背後へと回った。後ろから抱きつき耳元にフッと息を吹きかければ、ぞわぞわしたのか大人しくなった。
「じゃあ俺がパフェ好きで食べたいから付き合ってくれる?」
「……どうしてもって言うんなら」
「嫌なのに俺の好きなことに付き合ってくれるなんて、和は可愛いだけじゃあなくて優しいんだね」
「……っ、」
完全に照れた様子で大人しくなった和は、唇を噛みしめると、手の甲で頬を隠した。「時々、徹は意地悪言うよな」なんて、可愛い言葉をゴニョゴニョ言いながらまた俺を刺激してくる。目的が変わってしまった。こんな姿を見せられてしまえば、誰だって他の奴には見せたくないと、そんな気持ちになるだろう。この和は俺だけが知っていたい。
◇
与えられたオモチャを独り占めする子どもと同じ気持ちが未だ自分の中に存在するなんて。ましてそれが与えられたものでなく自分で手に入れたものなら尚更その思いは強くなる。
「徹……」
「なに?」
「俺、お前のこと嫌い」
「え?」
「……嫌い、だったのになぁ」
休日なのに、和は俺と一緒にいた。断られるだろうと思ったのに「和の家に行きたい」と言った俺を拒まなかった。久しぶりに友人を家に連れてきたらしく、和のお母さんは俺をとても歓迎してくれ、今日は泊まって行けばいいとそんな流れになり、まさかのまさかで俺は和の隣で眠ることに。
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