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ベッド派じゃあなくて布団派だったのか、布団と布団をぴったりくっつける派だったのか、とかそういうことを気にしている暇はなく、お風呂上がりで眠くなったのかぼんやりしている和が座って漫画を読んでいた俺の肩にもたれかかってきているこの状況に心臓が騒いでいる。
「嫌いだったのになぁってことは、今は好きってこと?」
「……そんなこと言ってねぇだろぉ」
「和、もう眠いんだろ? そろそろ寝ようか」
「嫌いじゃあなくなったってだけで、それがイコール好きなわけじゃあねぇよ」
「はいはい、分かったからもう寝ような?」
俺と同じくらいの身長で体格は俺より良く、お世辞でも軽いとは言えないその体を支え、そっと布団へと寝かせてあげた。まだ完全に乾いていないその髪は柔らかそうで、指先に絡めて遊ばせると、「触んなぁ」と甘えた声を出す。
「和、可愛いね」
「そんなこと……ねぇ、よ……」
「ふはっ、おやすみ」
すとんと寝落ちてしまった和に布団をかけた。今の和を見れば名前にも納得できる。口は悪いけれど彼のことを知れば知るほど一緒に過ごす時間は穏やかになる。
誰かが言っていた、「いくら中身が素敵だとしても、見た目が良くないとどんな人か知りたいと思ってもらえない」という言葉は必ずしもそうではないけれど、和には言えることだと思った。初めから皆が見た目で判断しなければ和だって心を開くだろうし、そうすれば和が威嚇するようなあの態度をクラスメートにとることもなかったかもしれない。スースーと静かな吐息を立てて眠る和を見ることができるのも俺だけじゃあなかったかもしれない。
けれど校則をきちんと守っていれば良い話なわけで、いくら人を見た目で判断してはいけないと言っていても、和にだって非がある。
「バカだね」
それなりにしていれば良かったのに。そうしたら「普通」の転校生としてこのクラスに馴染めたかもしれない。俺が操作される側の人間だと決めつけることも、勝手に俺の気に障る対象として扱われることもなかった。遊びの標的にされることも、そして変な独占的に付き合わされることもなかった。
「可哀想に」
何となく皆に嫌われて、俺だけに懐いているなんて、俺はそのレベルの好意はいらない。目的は変わったけれどやることは変わっていないのだから、俺はやりたかったことを実行するよ。
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