微笑む顔の下で

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「ふはっ」 「徹、何で笑ってんだよ」 これまで好き勝手に他人を操作してきたであろうこのクラスメートを俺が支配してやる。和への勝手なイメージを俺が奴らに持たせ、俺に支配されたクラスメートが和を操作するんだ。そうすればこの教室にいる奴ら全員が俺の手の中に。俺が悪いことは何もない。俺の気に障った和が悪い。俺が植え付けた俺という人間のイメージをすんなり受け入れたクラスメートが悪いんだ。 「和、君のおかげで毎日が楽しくなりそうだよ」 「俺は悪夢の始まりって感じだけどな。お前のこと好きになれそうにねぇし」 「好きになるよ、きっと」 そう仕向けてやるから。その強さを壊してあげるから。和の味方は俺しかいなくなるように、俺が操作して、そうしたら君にはどうしたって俺が必要になる。俺の存在に感謝するようになるだろう。……大丈夫。最後に俺まで裏切るようなことはしないよ。俺の嘘で君を苦しめる分、必ず傍にいてあげるから。 ◇ 古里和という人間は、俺の期待の遙か上を行く奴だった。 最悪な第一印象は塗り替えられることはなくて、このクラスに馴染む気は全くと言っていいほどに感じられず、いつも眉間に皺を寄せていた。 授業で先生に当てられても無視するか、明らかに簡単な解答の時だけ口を開くかで、転校生だからと気にかけてくれていた先生たちまで彼を冷めた目で見るようになった。 昨日あんなことがあったこんなことがあったと皆が盛り上がる中、肘をついて一人だけ窓の外を見つめているだけで会話には入らないし、どうして転校してきただとか、前はどこに住んでいただとか、何が好きで何が嫌いだとか、自分のことを話す気も一切ないらしい。 初めこそは、悪い印象は変わらずとも歓迎してあげようという雰囲気が多少はあったけれど、今じゃあ「こんな奴がうちのクラスに転校してくるなんて最悪だ」とのレベルにまで落ちている。俺が操作しなくとも、和は自ら孤立の原因を作ってくれていた。
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