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だが、こういう時に何と言っていいかわからない。
それは俺という不法侵入者に不幸にも遭遇した少女も同じだったようだ。近所のスーパーの袋を下げ、玄関の扉を開けた状態のまま固まっている。彼女は俺と身長が頭二つ分も違うし、部屋は電気が付いてないから俺の顔は見えづらいしでなおさらだろう。
恐る恐るといった感じで俺を見上げていた。
遠くで夕焼け小焼けのサイレンが聞こえる。
俺もとにかく帰り……もとい、逃げ出したい。それには彼女を押しのけるなりしないといけないだろう……が、高さだけでなく横幅(あとおそらくコートの下の胸周り)も細い彼女に力を振るうのはためらわれた。死んだばあちゃんが漢としてそれはなんねぇと言っていたし。
仕方がないので、そっと右手を差し出してみた。
「あ、あの、おれ――」
「ごめんなさい!」
差し出した手がちょうど、下げた彼女の頭にぶつかった。
「痛っ」
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