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テルがいかつい年長者にいった。
「ソウヤさん、あんたはなんでだ?」
身体中傷だらけの歴戦の勇者はだるそうに口を開いた。ソウヤは叩きあげの兵士で、言葉より行動で語る。タツオは不思議だった。太い木の幹から荒いのみで掘り出したようなごつごつしたソウヤの顔がかすかに上気していた。頬(ほお)に赤みが見える。
「おまえたちと同じ理由だ。おれは故郷にいいなづけがいる。帰るなら60~70の身体でなく、せめて中年男くらいでもどってやりたい」
クニがぼそりといった。
「嫁さんもらうなら、そうだよなあ。おれもあんな夢さえ見なけりゃ、またのんでもいいんだけどな」
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