SATORI (聖なるもの)

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しかし その後 山の精は 沈黙してしまいました。 私は 「いったい今のは 実際有った出来事なのだろうか?」と 瞑想ではなく 自問自答を始めました。 すると 先程まで うるさいくらいに聞こえていた 山の音が ピタリとしなくなっていました。 「山の音が消えた これはいったいどう言うことなのか?」 再び 自問自答を繰り返しては 気がついた。 闇の中で視力を失ったと思っていたら 次は 静寂の中で聴力をなくしたのではないかと? そこで 頭のなかに ある考えが 浮かんできた。 「これは なくすことで 悟を得るのではないか?」と 視力 そして 聴力 そういえば この洞窟の中では 湧水を飲んで  生き永らえてきているがもしや。。。。。。 味覚も 当に 失っているのではないか? と 考えが浮かぶや 湧水のところへ行って 水を掬い上げて口へ 持っていき 一挙に 口に含み 水を味わうと おお やはり  昨日までは とても旨く 甘露と感じていた水が  なんの味もしなくなっている 喜ぶべきことのようで 何やら嬉しくもあったのだが しかし  ここで また違う考えが 頭に浮かんだ 「視力 聴力 そして味覚。を失ったと言うのは ただ単に 生物として生命力が衰えてきただけではないのか?」 と 恐ろしい考えが  心を 捉えてしまいました。 そこからは まさに絶望感ばかり募って もはや 経を唱えることなどやらなくなっていて 頭では 「どうしたら 生命力を復活できるかと」 考えてばかりいました。 これでは 悟りを得るなんて 到底 無理な相談ですね しかし  ここで やっと 自身が 何故 山の中腹の洞窟にいるのかという目的を 思いだしたのです 「私は 何を 考えていたのだ。生命力の衰えが何故恐ろしいのだ。 自ら 断食をして 外界との関わりをなくしてここにいるのだ。そうだ。いや。私は 悟りを得るためにここへやってきたのではないか」 「何を恐れることがあったのだ。愚かな生き物だなぁ 私も」 そう呟くや 何やら可笑しくなって ゲラゲラと 一人笑いを していました。 「視力 聴力 味覚 次は何をなくすのやら」
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