SATORI (聖なるもの)

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一人笑いを 繰り返しては 瞑想に入った私は 今度は 洞窟内の 匂いがしないことに気がつきました 「次は 臭覚か」 しかし この臭覚を 確かめようとしたが  それは やめた 匂いがあるもの自体 この洞窟内では なかなか見つからないからだが 敢えて 試さなくても なくなっているという思いが 心に  芽生えた感覚を 信じようと思ったのだ。 そして 次 予想されるのは 触感であろう その時になって 私は  五感を失って 得られるものについて 考え始めました 「うむ。やはり 第六感のようなものが研ぎ澄まされるのであろうか?」 「しかし それが 悟りなのであろうか」 「いや。 何かが違う気がする」 っと 頭の中で 解決するはずもない 堂々巡りをしているうちに 気がつけば。 触感を失っていました。 そうです。 私は ついに 五感全てを失いました。 しかし 特に 私の中では 何も変化が訪れたわけでもなく さりとて 味覚を失った時のように 生命力の衰えを感じとるわけでもなく ただ。 たんたんと 時が流れて行くのを感じていたのだが そのうち 時の流れさえ 感じとることができないようになってきました。 「もしかしたら このまま 悟りを得ることなく 屍になってしまうのかもなあ」 などと 考えていられるうちは まだ 良かったのかもしれない。 そのうち 思考するということさえ なにやら難しくなってきたのだ。 が それが悟りへの第一歩なのだと思うようになり すなわち 自分自身の思考が 消えたようだった。 所謂 無我の境地とでも言うのであろうか? もはや思考力もない 頭で 思い浮かんだだけなようだが。 無 無 無無無無無無無無無無 まさに 何も無くなった感覚さえも ない。 完全な無 いや もしかしたら これは 虚無かもしれない なんて 久しぶりに思考が 頭を過ったが。 別に なんでも構わない。 そう 何もないのだから 無いものに意味を求めてもしょうがない。 なんだか 哲学めいてきたな などと 再び 頭に思考が過った。 でも 五感の無くなった自分自身 そして思考まで 途切れてきている自分自身 これが 悟りへの道なのかも 考える力さえ無くなったが。 それでも構わなかった
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