色と欲

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唇を重ねたまま、もがいて押しのけようとしてくる手を握り、体を相手に押しつけた。 強引に。ほとんど襲いかかる勢いで。 なっ……やめっ…… 言いかけた口元をつかみ、もう一度舌を絡め、きつく吸う。 間もなく、相手は抵抗することをあきらめ、大人しくなった。 そう。 そのあとは、じっくりゆっくり味わって。ただ心地を楽しめばいいだけ。 伝わっていく感覚を。共鳴する快楽を。征服する衝動を。 私の中に寄生し、さっきからずっと渦巻いていた暗い欲情。 イライラして、悶々として。 むず痒いような、熱いような。 じくじくとした、疼きと痛みを覚えてた。 発症した瞬間を覚えてる。 両親のせいでも、バイトのせいでも、勉強のせいでもない。 ままならないもの。……それは、さっき暗闇の中で、この身の中に湧きおこった激情。 見えないはずものが、透かし見えた、あの時。あの場所で、心の奥底に病が巣食った。 自分だって求められる存在でありたい、と。 切実に……。
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