色と欲

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カンカン、カン……カツカツ、カツ。 頭上から二つの足音が近づいてくる。 なんだか慌てた様子で駆けおりてくる、男女の姿を想像し、心臓がブルリと震えた。 ねぇ、どう思う? 何を感じる? 動揺する? 興奮する? きっと次に起こる事態を、今、唇で繋がってるこの男も、頭の中に思い描いてるはず。 だけど、むこうは私の体を離そうとしなかった。 むしろ、それまでよりもずっと強く、きつく抱きしめてきた。 貪るようにして、歯のつけ根に舌を這わせながら。 足音は、どんどん大きくなってきてるというのに。 二人が、もうすぐそこまで、近づいてきているというのに。 私は満足していた。 終わらない口づけを交わしながら、クスリと笑う。 ほら。もう逃れられなくなったね。私色に染まって。 苦しくて甘くて、いつまでたっても忘れられない。 感染する、よろこび。 それを知ってしまったから。 完治しない病。 患ってるのは…… 【完】
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