色と欲

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陽介を学校で初めて見かけたのは、このサークルで一緒になるよりも前のこと。 講義の時たまたま隣の席になって、どちらからだったかは忘れたけれど、何となく声かけあって、話をしたのが最初。 とはいえ、彼はあんまり社交的なタイプでもなく。 落ち着き払った物腰と、静かな口調。いつも眠たそうに、ぼんやりとしてる。 ただ着てる服にはこだわりがあるようで、いつもセンスよくて似合ってるから、そういうところ、いいなって思ってた。 たまに目にするオーバーサイズのグレーニットが、すごく好き。 軽く毛先パーマの黒髪と、本当にピッタリだと思う。 勝手に黒縁メガネかけた姿を妄想して、一人ほくそ笑んだりしてたのは、私。 ねぇ、一緒にサークル入ろ? そう誘ったら、高校の時からの友人だと言って、浩平を連れてきた。 それで、たまたま私の隣にいた由衣が目を輝かせる。 浩平は入学当初から、一部の女子の間では有名な男だった。 整った容姿と、高身長。小さな頭に長い足。 モデル並みのスタイルの良さは群を抜いていて、それは誰もが認めるところ。 構内でも人目を引く華やかな存在。 はっきり口に出しては言わなかったけれど、当初は由衣もファンだったみたい。 浩平とお近づきになれると知って、すぐにサークルの入部届け書いてたしね。 ただ私は、そのあまりにも中性的なルックスと、整いすぎた顔立ちが苦手だった。 あと、だいたい黒っぽいものでまとめてれば何とかなると思ってそうな、服に無頓着な感じが残念。 それに、いつも陽介にベッタリで、あんななのに浮いた噂も聞かないから、いろんな疑惑が密かにささやかれてたりするのも知ってる。 もちろん、だからと言って差別する気なんて、これっぽっちもなかった。 友だちとして接するだけなら、案外サッパリしてて気兼ねせずにすむ、いい奴なんだ。
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