色と欲

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由衣のアパートの階段下に座り込み、一人、体を丸め膝を抱える。 吐く息が白く見えた。 目の前の国道を車が走り抜けるたび、冷たい夜風が吹き抜けるけれど、由衣に借りたスウェット一枚の体は、まったく寒さを感じない。 ただ、鼻水が流れ落ちる。とめどなく震えて。 頭の芯がジンジン痺れてるせいかな。体の機能を上手くコントロールできていない。 考えてみれば大学に入ってから、いいことなんて一つもなかった。 何の倦怠期か知らないけど、両親の仲はどんどん悪くなっていくし。 夜中に突然、起こったケンカのせいで、昨日の朝なんて、お母さんの顔に痣ができてた。 それに昼間はバイト先の店長に、こっぴどく叱られた。 怒鳴りつけられ、にらんだら、さらにキレた。なんなのアイツ。 人手足りないとか言うから、試験前もシフト入れてあげたのに。 あんな店、いつでも辞めてやる。 明日の朝、講義に遅刻したら、単位を落とすかもしれない。 どうでもいいような内容の、つまんない授業のせいで留年になったら、人生狂わされる。 そもそも、ここの大学は本命じゃなかったんだ。 もうあと一歩、踏ん張れてたら、ワンランク上のところへ行けていたはず。就職先も変わってたはず。 志望してた大学に合格した友人たちを見かえすため、思いっきり羽目を外して、学生生活を楽しんでやろうと思ってた……のに……。 なんだ、今のこの、私の状況は。
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