誕生日会をしよう

10/13
前へ
/13ページ
次へ
ショートケーキの最後の一口。取っておいたイチゴを口に入れた。 目が潤みそうなのを我慢して食べているせいで、耳の奥を熱いような痛いような感覚が襲う。 「お母さん偉いなあ…。」 と呟いた時、メールの着信音。 母からだった。 『お誕生日おめでとう。今年も一番乗り。』 思いを巡らすうちに、日付が変わっていたようだ。母は毎年、誕生日が来た瞬間を狙ってメールしてくる。私と連絡をとるために、還暦を過ぎてからメールの仕方を覚えた。 いろんなことに興味を持って挑むのは昔から変わらない。わからないことを、その辺の見知らぬ若い人に突然尋ねたりもするので、それは少し心配だが、ある意味それが母の健康法だ。 80のおばあちゃんが、メールのために眠い眼をこすってこの時間まで起きていた。これだけの文面でも、間に合わないことのないよう30分位前には打ち込んでいたかもしれない。 「まるで彼氏に送るみたいじゃん。」 何だかかわいらしくて、口元が緩む。 そんな想像をしたのは多分今年が初めてだ。例年、母のメールに気づくのは朝になってから。お母さん、ごめんね。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加