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ショートケーキの最後の一口。取っておいたイチゴを口に入れた。
目が潤みそうなのを我慢して食べているせいで、耳の奥を熱いような痛いような感覚が襲う。
「お母さん偉いなあ…。」
と呟いた時、メールの着信音。
母からだった。
『お誕生日おめでとう。今年も一番乗り。』
思いを巡らすうちに、日付が変わっていたようだ。母は毎年、誕生日が来た瞬間を狙ってメールしてくる。私と連絡をとるために、還暦を過ぎてからメールの仕方を覚えた。
いろんなことに興味を持って挑むのは昔から変わらない。わからないことを、その辺の見知らぬ若い人に突然尋ねたりもするので、それは少し心配だが、ある意味それが母の健康法だ。
80のおばあちゃんが、メールのために眠い眼をこすってこの時間まで起きていた。これだけの文面でも、間に合わないことのないよう30分位前には打ち込んでいたかもしれない。
「まるで彼氏に送るみたいじゃん。」
何だかかわいらしくて、口元が緩む。
そんな想像をしたのは多分今年が初めてだ。例年、母のメールに気づくのは朝になってから。お母さん、ごめんね。
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