【芸術的な人生】

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…常々、思うのだが… 恐らく、私の『前世』は、 とても高名な、芸術家に違いない。 いや…。 『前世』と言うより、もっと踏み込んだ言い方をすれば… 私は、ある高名な芸術家の、むしろ『正真正銘の生まれ変わり』と言ってしまっても過言ではないのではないか…と、思えてしまう時が有る。 と、言うのも、 私は、生まれてからこれまでの人生の中で、いわゆる『文豪』と呼ばれる大作家の作品を読んだ事も無ければ、高名な俳人の一句を読んだ事も無く、 ましてや、歴史に名を残すとされるであろう名高い絵画や彫刻と言った創作造形物を目にした事も、ほとんど無い。 (いや、全く一度も無いと言っても良いだろう) にも関わらず、である。 私は時折、自室の窓の外から見える美しい山々の景色や、テレビに映し出される雄大な大海原の風景などを目にする度に、 いつの間にか自分の頭の中に流麗な文章や詩の一節、美しい絵画や彫刻と言った造形物のイメージがまさに泉の如く、次々と湧き出て来るのである。 (自分で言うのも何だが、それらのどれもが我ながら芸術味溢れる素晴らしい物だと思う) とは言え、 私の周りには、そう言った芸術的なムードも雰囲気も全くの皆無だ。 となれば、 やはり私は、さる高名な芸術家の『生まれ変わり』と考えざるを得ないのだ…。 もしかしたら、世の中には『前世の記憶や感性』を部分的、断片的にせよ、持ったまま『現世に転生』して来る人間がいるのかもしれない…と、私はそう思っている。image=510193567.jpg
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