副会長は運動不足

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制服のブレザー右ポケットに入ったピンケースを徐に取り出して、扉の僅かな隙間から入り込む陽の光に透かしてみた。 こんなに頑張ってるのは、やっぱりBL的展開を望んでいるからで。 ただそれだけのためにここまで頑張る必要というか、何故自分が敬語堅物副会長キャラを務めようとしたのか、ここまでくると思い出せなくてまたため息をついた。 ため息は幸せ逃げるよ! 遊夜が高人にたまに言う言葉。 幸せなんて、俺から逃げる幸せなんて最初からないんだよな。 ーーーガラガラッ 「……っ!」 「な、っんだ、奏太か」 「………高人」 いきなり開いた扉に勢い良く体を起こしたせいで、手に持っていたピンケースを落としてしまった。 プラスチック製のケースは接合部が簡単に欠けて、中身を撒き散らす。 「っすまない、驚かせてしまった」 「いえ、こちらこそすみません」 一緒になってピンを拾ってくれる高人に行動を押し止め、床のコンクリートの欠片やら砂埃やらも一緒に掻き集めケースへと入れる。 「これ、奏太のか」 「いっいえ、わたしはここで一休みしようとしていたのです。マットの上にこれが落ちているのを見つけ…わたしが後で落し物として届けておきますね」 「ああ、助かる」 はやく、早く出て行ってくれ。 疲れたんだ、今すぐにでも部屋に行って寝たいというのに、よりによって高人が隣に、 「奏太、珍しいな」 「なにがですか?」 くいくいっと自身の大きく開いたワイシャツの首元を指差す高人に、未だに理解できずに首を傾げた。 「高人、分かりませんが…」 「だから、ボタン。お前がそこ開けてるの珍しいなって」 「……ぁ、ごめんなさいっわたしとしたことが」 「いや、最近暑いしいいんじゃねーのそれくらい」 「生徒会会長が何を言っているんですか。だいたい高人は開けすぎなんです」 「それはふくかいちょーからの可愛い警告か?」 「な、に言って」
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