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桜の花びらと重なる彼女を僕は撫でた。
優しく丁寧に。
何度も。
何度も。
彼女の髪を撫でるように。
『ねえ、月子……ごめん……。ずっと、一緒に居てやるって言ってたのに……。君は、僕の選択をどう思う?』
踏ん切りがついたわけではない。
だけども、この世の中でまだ生きることを選択した僕を、彼女は誉めてくれるだろうか。
空になった旅行鞄を軽く肩に掛けながら、僕はその場から一歩踏み出した。
会ったばかりの、子猫と一緒に。
了
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