6人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
それは弓矢を思わせた。
弦を引きしぼって、ぎぎっと軋んでも、さらに強く強く引きしぼって、そして - 放つ!
ドスッ。
いきなり放たれた手が、昭雄の左胸を強かに打った。
一瞬息が詰まり、かはっと苦いものが口から飛び散る。
どくっどくっと激しい鼓動が喉の奥からせり上がってきて、昭雄は胃液を吐いた。
きゃあ、と女子高生が悲鳴を上げる。
「え、なに、マジで・・・?」
悲鳴にかぶるように男子高生の動揺した声がする。
青年は通勤カバンを抱きしめて、どんどん後方にさがっていた。
最初のコメントを投稿しよう!