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それは容赦なく、すぐにまた始まった。
よろめいて片膝をついた昭雄の右手が、またも動き出す。
昭雄は全身から汗を噴いて、ひっと喉の奥を鳴らした。尻もちをついて、勝手に持ち上がっていく右手を見る。自分の手なのに、他人の手を見ているようだ。
腰を抜かした昭雄を見下ろすように、高く高く右手がぐぐうっと上に引っ張られていく。
開いた掌が昭雄を見ていた。肩に千切れそうな痛みを残して、高みへと引っ張り上げられていくのは、手の甲だ。
下腹部が恐怖で麻痺して、失禁しそうだった。
ー そうだ。妻がなった、あれだ。
昭雄は正月にこれと同じ症状を見ている。
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