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「ボタン、俺はずすから」
「あ、は、はい。・・・おじさん、だいじょうぶ?」
昭雄の、汗でじっとりと湿った掌を両手でぎゅっと握りしめた女子高生は、気持ち悪さにか、この症状の奇怪さへの嫌悪にか、口元を震わせていて・・・・昭雄は申し訳なくて声が出なかった。
どう見ても、化粧をして髪も明るく染めている、昔の娘そっくりの女子高生だ。娘はこのくらいの頃、父親の昭雄をはっきりと避けていた。
ー こんな中年男の、汗だくの手になんて触りたくなかろうに。
「つかんでたらいいんだよな、確か。おじさん、どう。動きとまってるよな?」
たしかに、昭雄の右手はまだ自由に動かすことはできなかったが、しかし勝手な動きもとまっていた。
跳ね返るようにして、昭雄の身体を打つことは、きっともうない。
は、と短く息が漏れて、昭雄は強張っていた全身の力を抜いた。
まだどこどこ鳴っている心臓を左手で押さえる。
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