日:マヒリマヒウィルス病。英:Mahirimahi virus disease

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ーーーーーーーーーーーーー 右手マヒマヒ病。(日:マヒリマヒウィルス病。英:Mahirimahi virus disease) 初めてこのウィルスが発見されたのは、ちょうど5年前の3月。イギリス北部にある小さな町マヒリマヒで、出産直後の女性が発症した。28歳のこの女性が、最初の感染者である。 最初の感染者を確認した町の名がマヒリマヒであることから、マヒリマヒウィルス病と命名された。 潜伏期間はおよそ3~4週間で、ヒトからヒトへの飛沫感染をする。他に類を見ないほど猛烈な感染力だが、発症する確率は1%以下と低い。 しかし、エボラウィルス等のように命にかかわる病ではなかった為、その特異な症状のみが取り沙汰されて、感染拡大への対策は後手にまわったと言わざるを得ない。 発見とほぼ同時に世界規模で爆発的に広まった、その感染速度はまさに「パンデミック」だが、このウィルスのあまりに微笑ましい弱点を知れば、他の命を脅かすようなウィルスと同等に位置づけることはできなかった。 感染者は、自身の利き手に発症することが多く、指先から肘あたりまでを侵したウィルスが脳から手あるいは腕への伝達を阻害し、まったく別の動作を引き起こす。重篤な場合は筋肉の損傷、骨折に至る。 日本では、右手を利き手とする人の割合が多いことと、マヒリマヒを麻痺(マヒ)とかけてか、右手マヒマヒ病という通称で知られる。 特効薬は、薬剤としてはない。 けれども、最強の特効薬を大抵の人々は身近に備えている。 人肌の温度 - これがこのウィルスの弱点。 単に36度前後の熱に弱いだけ、という説もある。 だが温熱効果のある湿布剤や、お湯で温めることに、効果はないのだ。もちろん、自身の体温でも殺せない。 ただひとつ。 人の手などの、いわゆる人肌を、発症した部位に密着させることによる保温。ただそれだけで、このウィルスはほんの数秒で活動を停止し、1分で死滅する。 このウィルスはまるで魚のようだ、と誰かが言った。 人の手でつかんでしまうと、魚は火傷状態となって弱り、ほどなくして死んでしまうという。
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