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ごめんなさい、涼子。
心の中で、あなたを涼子と呼び捨てにすること、許して欲しい。
あなたは私が嫌いだよね。わかっている。だけど、この気持ちは止められない。涼子は栗が嫌いだって、私は知っていた。でも私はあなたに栗のモンブランを食べて欲しくて買ってきた。何でかわかる? それは、あなたの私への新たな表情が見たかったから。兄じゃなくて、私の行為であなたが嫌がる様子がこの目の前で見たかったの。
私が嫌いなあなたからすれば、この上ない最悪な誕生日。でも、私は涼子の誕生日を一緒に祝えてこの上なく幸福で、気持ちいい記念日になった。
涼子の顔を見れない。気持ちを悟られないように、兄が大好きな妹を演じてしまう。同じ空間にあなたといるだけで、私は幸せなの。
兄の彼女として紹介された日から、私は兄の妹という権利を利用して涼子の目の前に何度も登場したけど、私と涼子は兄で繋がれた関係。その間には、壊すことのできない壁がある。
でも、これは悪いことでもない。この気持ちを抱えたままずっと偽って生きていかなくてはいけなかったとしても、私とあなたは出会えた。もし、一緒に過ごすことの代償が自分の心を押し潰すことだとしたら、それは仕方のないこと。
会えない辛さに比べれば、そんなのただの片想いと変わらないから。
偽りの笑顔でいい。私との空間を、奪わないで下さい。
……そう、思っていたけど。やっぱり上手くいかないみたい。
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