あなたが憎い

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こんなことはよくあることなのだろうか。 目の前には近所で有名だというケーキ屋で買ってきたケーキが3つ並ぶ。2つはごくごく普通な苺のショートケーキ。それに挟まれて他の2つよりも少し大きな栗のモンブラン。 「このモンブラン、大きいでしょ。食べてもらいたくて買ったんだ」 実行犯は、私の目の前に座る私の彼氏の妹、美江。 この美江という女は、本当に兄である私の彼氏が好きみたいだ。私なんて眼中にないほど、兄の顔を笑顔で見つめている。たまにいるんだ、兄が好きすぎて兄の彼女を受け付けない妹。私の兄だ、あんたのもんじゃないって私に面と向かって言いたそうな顔してる。 一年に一度の誕生日ぐらい、二人で過ごさせてあげたいって気持ち、微塵も無いの。何か起こるかもしれないから見張ってようっての? そんなことあるわけないんだから、大人しく友達と遊びにいきなよ。そんな心配、ご無用だから。 笑顔が罪の女とはまさにこの子のこと。この子に惹かれる男大多数。 でも、納得できるはずない。この世界は平等でなけりゃいけないのに、何故あえてこのモンブランを買ってきて、一人だけ得する購入の仕方をしたんだ。理解できない。 百歩譲って本当に栗のモンブランを食べてもらいたかったとしよう。そうだったとしても、私は栗が嫌いなの。栗が嫌いな人ってけっこういるでしょ? 私が栗を食べられないって思わなかったのか。何故ベタな苺のショートケーキにしなかったの。まあ、苺のショートケーキが苦手な人もいるけど。 「美江、せっかく買ってきてもらったんだけど、涼子栗嫌いなんだ」 「え、そうだったの? ごめんなさい。知らなかった」 言葉だけの謝罪。そんなもの、気分を害するだけ。彼女は真顔でしれっと謝った後、密かに微笑んだのを私は見逃さなかった。
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