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兄がそんなに好きなら、少しでも兄が好きな相手を受け入れることはできないのだろうか。自分の知らない兄の様子を、彼女と仲良くなって彼女から入手するようなことは思いつかないのだろうか。
「じゃあ、涼子ちゃん。苺の方、食べる?」
「いいの?」
「うん。しょうがないから私がモンブラン食べるね」
一言多い。しょうがない、なんて。私が悪いみたい。でも、しょうがないか。彼女は私が栗を食べられないことを知らなかったわけだから、ここは兄の彼女として、ぐっと堪えよう。
「涼子ちゃん、誕生日おめでとう」
「ありがとう、美江ちゃん」
よそよそしく妹の名前を呼んで、偽りの笑顔を作って、何が楽しい。
こんなパーティ、早く終わればいい。
「あのね、お兄ちゃん。実は、ずっと悩んでいることがあって」
妹は、唐突に喋り始めた。
「どうした?」
「涼子さんにも、聞いてほしくて。だから今日ここに来たの」
「私も? 何だろう」
「あのね、お兄ちゃん。今度、涼子ちゃん貸してくれない?」
「……へ?」
素っ頓狂な声が重なった。
妹の顔はあまりにも真剣で、本当に私は兄の物と思っているらしい。
私が人の物になった覚えはない。私は私の物で、心も体も何もかもが自分自身の物で、私の全てをこの妹の兄に渡したことなど、一度もない。
これほど兄に依存する妹なのに、何度も私と会って偽りの笑顔であったとしても、学校の友達かのように会話しているはずなのに、この妹は私の気持ちなんて知ろうともしていない。
ほんの少しだけでいい。私の心の底の薄暗い空間に沈む決して吐き出すことのできない感情を読み取れ……なんて言わないから、表面に晒された部分だけでも感じてくれないだろうか。
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