これだけの話

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これだけの話

 これは私が東ヨーロッパのある国に行った時の話についてだ。  そもそもこの話は日本に戻ってきてから友人たちと再会した折りに、そこで同席した2、3人の友人の前で余興にと話しただけだったのが、そのうちの一人が口を滑らせてこの話を無関係の他人にまでしてしまった。そのせいで私はこの話を何度もする羽目になる。  やがて、私の事は噂に尾鰭がつきながら知人の間に広まっていった。そのせいで「自分も一つその話を聞きたい」と連絡してくる者が出てきて、わざわざ遠くからこの話のために私に会いに来る御仁まで現れる始末だ。  そこまでして聞くような話でもないと私は思うのだが、未だにそのうち機会があれば聞きたいという人が居る。もう面倒なので、いっその事、文章にしておく事にした。私の土産話を聞きたいという者がいたら、これを読ませてもらいたい。  他の東ヨーロッパの国がそうであったように、その国もソ連が崩壊するまではかつて共産主義の国だった。  抑圧的な政治体制が崩壊するまでは、国民による民主化運動がたびたび起こった辺りも別段、他の近隣諸国と代わり映えしない。     
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