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わたしが言葉を飲みこんだのは、ケーキに飽きたのではない。むしろケーキは大好きで毎日でも食べたいくらいだ。でも……この体型。わかった欲しい。あれから体重はうなぎのぼり。体重計は電池が切れてしまって数字を表示しないけれど、あえて電池交換をしていない。体重計に乗るのが怖い。次の不燃物の日に捨ててしまおうかとさえ考えている。こんな気持ち、腹筋が割れている郁生には想像もつかないだろう。
「……もう……ケーキはいいの。――っ!わかるでしょ、わたしのこの体。毎晩夜おそく夕食を食べて、デザートにケーキを食べ続けて……。あなたは体型が変わらないけれど、わたしは背も低くて……まるで……樽。そう樽みたい……」
途中、涙で詰まって声が途切れた。ただでさえ郁生に対して容姿にコンプレックスを抱いているのに、こんな樽のような体型に仕上がってしまって。一体何に自信をもって生きていったらいいのかわからなくなる。
郁生の手が肩に置かれた。ゆっくりと顔が近づいてくる。郁生の唇がわたしの耳に止まった。……ゴメンね、と動く唇に背中にズンと甘いしびれが走る。
「ぼくは実は太めの女性が好きなんだ。特に三桁が好きで。こんなこと言うと引かれるかもしれないと思って今まで黙っていた……。だからもっと太っていい。ぼくがきみの全部を最後までしっかり愛するから」
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