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第七章 ラブ、ウェポン
朝、目覚めると、郁生はすでに出社したあとだった。体に甘い疲れがまとわりついている。コーヒーを淹れようと寝室のドアを開けると、ソファベッドに郁生のパジャマが張り付いている。わたしは体の熱が消え、背中がスッと寒くなるのを感じた。
あの後、郁生はベッドで眠らず、起き上がってソファベッドで眠ったのだ。風邪をひいて以来、郁生がわたしとベッドを共にすることがなくなっている。
結婚して数年以内に寝室が別になる夫婦はごまんといる。仕事への出社時間の違いや、子供が生まれて泣き声に気を使って。あるいはイビキがひどいからなど理由はそれぞれだ。でもわたしたち夫婦には理由がない。
こういう小さなシミは何かの拍子に大きな水たまりとなり、やがてすべてを押し流してしまう濁流へと変わっていくのではないだろうか。
ふとつけっぱなしのテレビを振り返ると、朝のワイドショーが放映されていて思わず画面に魅入った。樽なんて生易しいものではないくらい太った女性が何人もひな壇に並んでいる。
わたしが釘付けになったのは女性たちではなく、画面にかかれたテロップ。
――三桁が好き!! 肉まで愛して――
夕べ郁生がいった「三桁」の意味がわからなかったけれど、あのときは自分の感情を保つのが精一杯で、聞き忘れていた。あとで尋ねてみようと思っていたけれど、テレビのテロップに出るくらい一般的な言葉だったとは知らなかった。
よくみると三桁の横に百キロ以上とルビがふられている。三桁とは体重が文字通り三桁ということがわかった。
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