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そのせいか、友人たちはみな学生時代から体型が変わらず、かえってスレンダーになっている友人さえいて、わたし一人だけが大胆にも太く変身していた。
だれもわたしの変化した体型には触れなかった。
いっそのこと、随分と太ったわねえ? とでも言われれば笑い飛ばすことも、言い訳のひとつもできる。もはや太った言い訳や申し開きをすることすらかなわず、電車の中でシミュレーションしたことはパアになった。
わたしはその時はっきりとわかった。――話題にされることすらはばかられるくらいわたしは太ってしまったのだということを。少しくらいの変化なら「どうしちゃったの? 少し太ったんじゃない」と笑っていえても、ここまで体型が変わってしまうと、もはや話題にのせないことがマナーになってくるのだ。
郁生は毎日わたしを見ているから、少しずつ増量していく体型に気づかないのだろうか。いやわかっているけれど、やさしいから太り過ぎた妻に苦言をいうこともできないに違いない。
家に向かう電車の中で、わたしは吐き出せない感情を飲みこむこともできずに、消化不良をおこしたかのように苦しくなった。口をギュッと結んでこらえる。情けなくて泣けそうだった。
ダイエットを始めようと決心した。郁生に気づかれることなく食事を変え、ウオーキングをして痩せるのだ。――わたしは変わる、そう決心をした。
家に帰ると郁生は食事も入浴も済ませていた。白いバスローブに身を包み湯上りのビールの缶を開けながら、同窓会は楽しかった? と笑顔で迎える郁生。
あなたの言う通り、たまには外に出かけた方がいいことがわかったわと答えると、郁生は満足そうに口元をほころばせた。
わたしは心の中でそっとつぶやく。
――そう、郁生は太っていてもいいというけれど、決めた。わたしは痩せる。
わたしは美しくはない。けれど少しでも郁生に釣り合うようになりたい。
そんな時、思わぬ方向から災難がやってきた。
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