第三章
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まずい、と思った時にはもう遅く、体が宙に浮いていた。 父の目を盗んで決死の思いで屋敷を脱け出したのだ。 裸足だった。父は最近私の草履を全て隠すようになっていた。豪雨の山中を迷い歩き、水音に気づくのが遅すぎた。 痛いも冷たいも感じる間もなく私の体は沢に落ちていた。 ああ、そうだ。父はいつも言っていた。この屋敷は自然に守られた要塞なのだと。複雑に張り巡らされた沢が私達を守ってくれていると。
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