7人が本棚に入れています
本棚に追加
柏からの説明でなるほど、異色なヤツが入職してきたな、と思った。私達死神の仕事は成仏し損ねた魂を救う事。命を扱う難しい仕事にも関わらず、同僚の連中はなぜかやたらと陽気でふざけたヤツらが多かった。
「クソ真面目なヤツもたまにはいいんじゃない?どれどれ行ってみようか」
柏と別れ、長い廊下を再び歩き出す。普段なら事務所へ寄って出勤簿を記入し、仕事場へ向かうのだが、今日は寄り道してこっそり研修室を覗いてみる。
講師を務める仙人と向かい合うように新人が椅子に座っている。残念ながらこちらからは角度が悪く顔が見えない。後ろ姿は細長く、質の良さそうな着物を纏った少年だった。真っ直ぐに伸びた背筋と、手入れの行き届いた髪からは育ちの良さが窺える。
新入りは机に向かい、頷きながら右手を高速で動かしている。どうやら本当に一字一句もらさず記帳しているらしい。
「プッ、クソ真面目……」
柏の言う通りの光景に思わず噴き出したところを仙人に気付かれた。
「ああ、サクラさん。ちょうどいいところに」
最初のコメントを投稿しよう!