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「ナオ坊!!」
医務室を出たところで名前を呼ばれ振り返る。白いワンピースをヒラヒラさせながらサクラが駆け寄ってきた。
「アンタ今日怪我したらしいじゃん!!」
「あぁ、もうバレましたか。本当に皆さん情報が早いのなんのって」
「大丈夫なの!?」
「ええ、大丈夫です。ちょっと恥ずかしいんですが、標的を斬って安心したところで転びまして。軽い捻挫です……。心配して来てくださったんですか?ありがとうございます。」
「あっ、あ、あたしは別に心配とかじゃなくて……!!てか!!自爆とか、アンタ昔っからぼんやりしすぎ!!あんまりトロトロしてると斬るどころか取り込まれるからね!!」
「そうなんですよねぇ。サクラさんのようにキビキビ動けるように精進します」
死神の仕事に就いて数百年が経っていた。
時間の流れは曖昧で実感はあまりない。しかし下の世界では自動車が走り飛行機が飛び交い、天国を目指しているかのような高層ビルが建ち並んでいる。あんなのは私が生きていた頃には一つも無かった。
無かった。とは思う。おそらく。
もう生きていた頃の記憶なんか皆無だった。
自分がどこでどうやって死んだのかも全く思い出せない。でもそれで良いんだと思う。
私には仕事があり、仲間がいる。必要とされ、役にたてることがあるのはとても幸せなことだと思う。
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