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興奮した表情と息遣い。ルナの胸から顔を上げた少年は目の前のルナを見つめ抑揚しながらルナの胸元に手を掛けた。
「──…っ!…」
詰め込んだキツい胸元の服を引っ張られ、ルナは目を見開き必死に暴れる。
その途端、激しい音を立てて大きな窓ガラスが割れた。周囲に飛び散る硝子の破片、それと共に何かが部屋に飛び込んだ。
唖然とした少年は硝子の割れた大きな窓に目を向けて動きを止める。
その後ろでチャリ──…と破片を踏み締める音がした。
少年は、はっと後ろを振り向いた。
後方に立っていた黒い影。それは白い霧を纏うとその姿をはっきりと露にさせる。
「その娘を離してもらえないかな──…」
「ひいっ…」
赤い瞳を魅せてゆっくりと近づいてくる──
小柄な少年の姿をしてはいるが明らかに普通の人間とは違う。
割れた窓から入る風は真紅のカーテンを揺らし、向かってくる少年のプラチナブロンドの髪を柔らかく撫でていった。
「リドリ──っ」
手の自由になったルナは口に巻かれたハンカチーフを外してリドリーを呼んだ。
ピンチを察して助けにきたリドリーにルナの胸の内が大きく揺らぐ。それに反応して赤い石が強く光った。
「───っ…」
グレイは婦人を抱く動きを止めて急に目を見開く。次第に肩を怒らせてグレイは全身を一気に総毛立たせた。
「……伯爵?」
「……っ」
「きゃあっ…」
表情を険しく変えた自分に呼び掛けて顔を覗く婦人をグレイは突然振りほどき、部屋の扉を蹴破る勢いで出ていく。
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