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「ルナっ…」
俺を裏切るならお前はっ…
グレイは一点を見据え、険しい表情を変えぬままルナの刻印の気配を探り続けた。
「きゃっ…」
「おっと…大丈夫?」
ふかふかとした感触の足元にフラ付いたルナの手を取り、リドリーはそのまま抱き締めながらルナを押し倒していた。
リドリーに連れて来られた巨大な樹の朽ちた切り株。
何者かによってなぎ倒されたのか上の方が折れている。
切断された切り株の真ん中は大きく深く抉れ、枯れ葉がクッション変わりになるほどに溜まっていた。
ぱさりと仰向けに倒れたルナの頬に、風圧で舞い上がった枯れ葉のカスがひらりと落ちる。
リドリーはそれを優しく払うとそのまま頬にキスをした。
ルナは抵抗一つもせずにされるがままだ──
嫌じゃない
この人に触れられるのは全然嫌じゃない──
ルナは覗き込んで微笑むリドリーを頬を染めて見つめ返す。
グレイの元を離れてもルナに行き場所は何処にもない──
たとえグレイを想う気持ちがあったとしても、あんなに冷たくて意地悪なら一緒にいても幸せなんて感じない。
それこそただの餌
そしてただ、抱かれるだけ──
“僕のところへ──…”
「……っ…」
ルナは優しすぎるリドリーを見つめながら急にグレイのことを思い出していた。
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