16章 舞踏会

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・ 意地悪で冷たくするくせにどうしてあんなに必死に抱くのだろうか。 グレイがするあの行為にはいったい何の意味があるのだろうか。 “どうしてもお前を抱きたい” 「───っ…」 リドリーに優しく抱き締められながらもふいにルナの顔がくしゃりと歪んだ。 「……ルナっ?」 「ごめんなさっ…急に色々思い出しちゃ…っ」 顔を両腕で覆い、急にしゃくり上げたルナに驚きながら、リドリーはルナの額に目を止めた。 うっすらと赤く浮き始めた逆さ十字── リドリーはそれをじっと見つめる。 そしてグレイはその気配に閉じていた目を見開いた。 「──っ!……ルナ?」 ルナの切なくて悲しい想いがグレイに届く── グレイは一瞬辺りを見回していた。 求めても払われ、軽くあしらわれることに胸を痛める純粋な想いが、グレイにゆっくりと染み込んでいく。
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