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「ルナっ…」
探れるっ…
そう思ったグレイは意識を集中させてルナの想いを辿った。
それは時間が経つにつれ、微かに薄れ、途切れ途切れになっていく。
リドリーが探れぬように邪魔をしている。
グレイはそれに気付き眉間を寄せた。
「……ルナっ…今考えたらダメだ──」
リドリーはルナの刻印に手を伸ばしていた。
このままでは居場所が知れてしまう──
絶大な魔力を誇る闇の主。今まで自分はその恩恵を受けてきた。
闇夜に浮かぶ月の力を分け与えられ、人間という餌を喰らう為、グレイは今まで他の吸血種族達を従えて晩餐の宴を開き、魔物達に捕食の機会をずっと与えてきた。
下級の魔物が自らの力で餌を取れるようになるには沢山の人間という餌を喰らい続けなくてはならない──
それまでは吸血種族の上に君臨するグレイが捕食を手引きして餌を与える。
無理に力を得ようとする魔物が人間を絶滅に追いやる迄に喰い殺さぬよう、定期的に宴という肉欲の晩餐を開いてきた──
地を這う魔物。吸血種族の中では最も下級のリドリー。そんなリドリーが、己の力で餌を狩れるようになるまでは程遠く、ずっと時間は掛かる筈だった。
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