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一人で玄関に辿り着いたルナは案の定、会場の者に呼び止められている。
「お嬢様、御一人ですか?どなたか男性のお連れ様は?」
「居ないわよっ!」
ムキに言われて係りの男は思わず怯んだ。
「申し訳ない…私の連れです」
グレイはすかさず間に入りルナの手を取る。その手を振りほどこうとしたルナにグレイは叱責していた。
「礼儀を覚えろ──…胸ばかり膨らんでそれができなければただの売女とやることは変わらんっ」
「──…っ…」
「わかったら手を貸せ」
ルナは小声で叱られてグレイから顔を背ける。
何をしてもバカにされて上から叱られる──
子供扱いもいいところだ。
あの人なら…
リドリーとならこんな惨めな思い、一つもすることはないのに──…っ
ルナは自分を上手に気持ちよくエスコートしてくれるリドリーのことをふっと思い出していた。
「──……」
グレイは俯くルナの胸元で短く光った石に気付いた。
「行くぞ」
グレイはルナを見下ろしながら低い声をルナに掛ける。
会場入りを済ませると、組んでいた腕を自ら離し、グレイはルナに背を向けた。
「食事にいってくる──」
「またっ…」
わかっては居たけどこうも開き直られてあっさり言われると言葉も返せない。
先を行きながら寄ってくる婦人の腰に手を回し作り笑みを向けて挨拶しているグレイの背中を見つめ、ルナは唖然とその後ろ姿を見送った。
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