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ルナはグレイの後ろ睨むと背を向けた。
帰りたいけどこのまま帰るのは何だか癪に触る。
ルナは綺麗に磨かれた床を見つめ下唇を噛んだ。そんなルナの肩を誰かが叩く。
「やあ、よかったらキッシュをどうかな」
「──……」
明るく声を掛けられて顔を上げたルナに微笑み掛ける。
大人とは言い難い。18くらいだろうか、ルナより年上の少年が小皿に乗せたこんがり飴色のキッシュを差し出していた。
「そこは人が通るからこっちへおいでよ」
「……あ」
出入口に突っ立ていたままのルナの手を牽くと、少年はルナを隅へと誘導していく。
グレイは戸惑うルナの様子に気づきちらりと目線だけを動かすと、また周りを取り囲む婦人達に笑い掛けていた。
「君はいつから?」
「え?」
急な問い掛けにルナは短く聞き返す。
「社交界デビュー、僕は二ヶ月前から…」
少年の応えにルナはああ、と声を上げた。
「あたしは、つい最近…まだ二回目で…」
応えながらルナは俯く。魔物のグレイやリドリー以外、若い男と話したことがない。
ルナは何気に頬を赤くして緊張を見せていた。
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