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「え?! あ……凪さん」
凪だと気付かずに通過したのは、彼女のいつもの華やかで勝気で隙のないオーラが、無かったからだ。
だが、それでも自分とは比べ物にならない程に美人には違いなかった。
わざわざ明るい色を選ばずに、モノクロな服を着ていても。
「スーツ……似合いますね」
「そっちはお洒落してる。デート?」
久しぶりの休みだった葛西は、以前に合コンで知り合った男性とデートだと話した。
合コンは好きだ。ちやほやしてくれるし適度に可愛く装っていれば誘惑だってされる。
ただ強引に押しすぎる性格で、その場限りで連絡が取れなくなる事が大半だ。
付き合う前から感じ取られて逃げられる事すらある。
「男って子供っぽいのよ、自分が優位にいたいだけ」
「どうしたら運命の相手ってみつかるんですか?」
「バツイチのあたしに聞くの?」
葛西が三軒茶屋でデートをするレストランまで、一緒に歩くことにした。
昨日口論をしておきながら現金だとは思ったが、気の乗らない相手とのデートにギリギリまで迷っていて、誰かに聞いて欲しかった。
せめてモチベーションを上げるためにお気に入りの服で来たのだが。
「いつか自然に見つかるんじゃないの」
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